疲労とはなにか?|なぜ私たちは疲れを感じるのか

FATIGUE & RECOVERY

疲労を感じてソファで休む女性のイラスト

「しっかり寝たはずなのに、朝から身体が重い」

「仕事が終わると、何もする気力が残っていない」

「以前は休日に出かけるのが楽しみだったのに、 最近は休むだけで終わってしまう」

そんな経験はありませんか?

私たちは日常的に「疲れた」という言葉を使います。

長時間歩いたあとの足の疲れ。 集中して仕事をしたあとの頭の疲れ。 そして、特に何もしていないはずなのに感じる、 身体全体のだるさ。

どれも「疲れ」と呼ばれますが、 実は、その背景にある身体の仕組みは 必ずしも同じではありません。

現代医学では、疲労には筋肉の働きだけでなく、 脳や神経、睡眠、免疫など、 さまざまな機能が関係していることが わかっています。

一方で、なぜ疲労が長く続く人がいるのか、 なぜ十分に休んでも回復しない場合があるのかなど、 まだ解明されていない部分も残されています。

疲労を理解することは、 自分の身体が何を必要としているのかを 考える第一歩です。

今回は、私たちが日々感じている 「疲れ」の正体について、 医学的な視点からわかりやすく解説していきます。

疲労とは何か? 「疲れた」と感じることとの違い

私たちは日常生活のさまざまな場面で 「疲れた」と感じます。 しかし、その疲れ方はいつも同じとは限りませんよね。

例えば、こんな経験はありませんか?

  • たくさん歩いた日は、足が重くなって動きたくない。
  • 仕事で一日中考え事をしていると、 頭が働かなくなる。
  • それほど身体を動かしていないのに、 夕方になるとぐったりする。

私たちは、こうした状態をまとめて 「疲れた」と表現しています。

しかし、医学的には 「身体の働きが低下していること」と 「疲れたと感じること」は、 必ずしも同じではありません。

疲労と疲労感は、必ずしも一致しない

疲労(Fatigue)は、 身体的・精神的な活動能力の低下を含む 幅広い概念です。

一方、疲労感は、 本人が感じる「だるい」「しんどい」 「もう動きたくない」といった 主観的な感覚を指します。

例えば、好きなことに夢中になっているとき。 長時間活動していても、 疲れをあまり感じないことがありませんか?

反対に、十分に身体を休めたつもりでも、 強い疲労感が残っていることもあると思います。

KEY POINT

疲労感の強さだけで、 筋肉や身体の機能がどれほど低下しているかを 判断することはできません。

疲れやすさにも個人差がある

もう一つ知っておきたいのが、 「易疲労性(いひろうせい)」 です。

これは、比較的少ない活動でも 疲労が生じやすい状態を指します。

例えば、以前は問題なくできていた 買い物や家事が、 最近は途中で休まないと続けられない。

こうした変化も、疲労を考えるうえで 重要な手がかりになります。

疲労・疲労感・易疲労性の違いを比較したイラスト
疲労・疲労感・易疲労性は、 関連していますが、それぞれ異なる概念です。 (画像をクリックすると拡大できます)

THINK ABOUT YOUR FATIGUE

自分の疲れについて、 少し考えてみましょう。

01 何をすると疲れるのか?
02 どのくらいの活動で疲れるのか?
03 休むと回復するのか?

疲れを理解するときに大切なのは、 単に「どれくらい疲れているか」 だけではありません。

疲れ方の違いを知ることが、 その背景を考える第一歩になります。

疲れはどこで生まれる? 筋肉と脳の疲労

「身体が疲れた」と感じる日もあれば、 「頭が疲れた」と感じる日もありますよね。

実は、疲労にはいくつかの側面があります。 筋肉の働きが低下することと、 考え続けたことで疲れを感じることは、 同じ現象ではありません。

まずは、それぞれの違いを見てみましょう。

筋肉の疲労と精神的疲労の違いを示したイラスト
筋肉の疲労と精神的疲労には、 異なる仕組みが関わっています。 (画像をクリックすると拡大できます)

① 筋肉の疲労(末梢性疲労)

たくさん歩いた後に脚が重くなったり、 筋力トレーニングを続けるうちに 同じ重さを持ち上げられなくなったりする。

こうした現象には、 筋肉そのものの力を発揮する能力が 一時的に低下する 末梢性疲労が関わります。
いわゆる「肉体疲労」です。

WHAT HAPPENS IN MUSCLES?

筋収縮に関わるカルシウムの調節や、 筋細胞内の代謝環境の変化など、 複数の仕組みによって 筋肉が発揮できる力が低下します。

ただし、筋肉の疲労を 「疲労物質がたまるから」と 一つの原因だけで説明することはできません。
また、筋肉の機能が低下していても、 本人が感じる疲労感の強さとは 必ずしも一致するとは限りません。

② 考え続けることで生じる精神的疲労

長時間の会議やデスクワーク、 集中力を必要とする作業を続けた後に、 頭がぼんやりしたり、 何も考えたくなくなったりすることがあります。

これは、認知的な活動に伴って生じる 精神的疲労(Mental Fatigue) と呼ばれる状態です。

日常的には「脳疲労」という言葉も 使われますが、 医学的に統一された診断名ではありません。

KEY POINT

精神的疲労は、単純に 「脳のエネルギーがなくなった状態」 という意味ではありません。

注意力や意欲、 作業に必要な努力の感じ方など、 複数の要素が関わっていると考えられています。

③ 身体と精神の疲労は、互いに影響する

仕事で一日中考え事をした後、 いつもの階段が普段よりきつく感じる。

そんな経験はありませんか?

精神的に疲れていると、 身体を動かすときに必要な努力を 大きく感じる場合があります。

2009年に報告された研究では、 認知的な課題によって精神的疲労を生じさせた後、 持久的な運動の継続時間が短くなることが 示されました。

RESEARCH NOTE

Marcora SM, et al. (2009).
Mental fatigue impairs physical performance in humans.
Journal of Applied Physiology.

研究論文を確認する
長時間の認知活動によって運動時の努力感が増す場合があることを示す図
精神的疲労によって、 同じ運動でも努力感が増す場合があります。 (画像をクリックすると拡大できます)

SUMMARY

身体を動かして生じる疲労と、 考え続けることで生じる精神的疲労は 異なる側面を持っています。 しかし、私たちが感じる疲れには、 その両方が関わることがあります。

では、こうした身体や精神の状態を、 私たちはどのようにして 「疲れた」という感覚として 認識しているのでしょうか?

なぜ私たちは「疲れた」と感じるのか?

たくさん歩いた後に感じる疲れと、 一日中考え事をした後に感じる疲れ。 原因となる活動は違っていても、 私たちはどちらも「疲れた」と感じます。

では、この疲労感は どのようにして生まれるのでしょうか?

疲労感には、脳の働きが関わっている

私たちが感じる疲労感には、 脳による身体の状態の認識や、 活動に必要な努力の感じ方などが 関わっています。

例えば、同じ距離を歩いたとしても、 よく眠れた日と寝不足の日では、 疲れ方が違うことがありますよね。

身体の状態だけでなく、 睡眠や気分、ストレス、 そのときの活動状況などによっても、 疲労感は変化します。

睡眠・栄養・ストレス・痛みなどが疲労感に関わることを示す図
疲労感には複数の要因が関わり、 その組み合わせは人によって異なります。 (画像をクリックすると拡大できます)

KEY POINT

疲労感は、筋肉の状態だけで決まるものではなく、 脳の働きや睡眠、心理的な負担など、 複数の要因によって変化します。

疲れは、身体からの大切なサインでもある

疲労感は、活動を続けることが 負担になっている可能性を知らせ、 休息や行動の調整につながる 感覚の一つと考えられています。

例えば、長時間の作業を続けているときに、 集中力が落ちたり、 休みたいと感じたりすることがあります。

こうした感覚をきっかけに 活動を中断することは、 無理を重ねないために役立つ場合があります。

ただし、 疲労感があるからといって、 必ずしも身体の組織が傷ついている わけではありません。

反対に、疲れをあまり感じていなくても、 身体に負担がかかっている場合もあります。

「エネルギー不足」だけでは説明できない

疲れを感じると、 「身体のエネルギーがなくなったのかな?」 と思うこともありますよね。

実際に、食事から十分なエネルギーを 摂取できていない場合や、 身体の代謝に問題がある場合には、 疲労に関係することがあります。

しかし、日常生活で感じる疲労感のすべてを、エネルギーが単純に不足した結果として説明することはできません。

睡眠不足、慢性的な痛み、 精神的な負担、体調の変化など、 さまざまな要因を考える必要があります。

SUMMARY

疲労感は、身体の状態をそのまま映す 単純な指標ではありません。 脳の働き、睡眠、栄養状態、 心理的な負担などが関わる、 複雑な感覚です。

それでは、十分に休んだつもりなのに、 なかなか疲れが取れない場合は どう考えればよいのでしょうか?

次は、疲れが長引く背景について 考えていきましょう。

休んでも疲れが取れないのはなぜ?

「休日はゆっくり過ごしたのに、疲れが取れない」

「朝起きた瞬間から、もう疲れている」

こうした疲れが続くと、 何が原因なのかわからず、 不安になることもありますよね。

疲れが長引く背景には、 睡眠や食事、身体の痛み、 精神的な負担、そして病気など、 複数の要因が関わっている可能性があります。

睡眠不足、食事や栄養状態、ストレスなど疲労が長引く背景を示すイラスト
疲れが長引く背景には、 複数の要因が重なっている場合があります。
画像をクリックすると拡大できます。

① 睡眠の量や質が十分ではない

睡眠は、心身の健康を維持するために 欠かせない時間です。

睡眠時間が不足していたり、 夜中に何度も目が覚めたりすると、 日中の眠気や疲労感につながることがあります。

また、長い時間ベッドに入っていても、 必ずしも十分な睡眠が取れているとは限りません。

CHECK POINT

睡眠時間だけでなく、 寝つき・夜中の目覚め・起床時の感覚なども、 疲労を考える手がかりになります。

睡眠と鍼灸の関係については、 別のページでも詳しく解説しています。

睡眠と鍼灸について詳しく読む →

② 食事や栄養状態が関わっている

私たちの身体は、 食事から得たエネルギーや栄養素を使って 生命活動を維持しています。

食事量が少なく、 必要なエネルギーを十分に摂取できていない場合には、 疲れやすさにつながることがあります。

また、鉄やビタミンB12の不足によって 貧血が起こり、疲労感の原因になることもあります。 鉄欠乏では、貧血に至る前から 疲労を感じる方もいます。

特に月経のある女性では、 月経による鉄の損失も考慮する必要があります。

日本の医学生127名を対象とした朝食習慣と疲労の関連を紹介する研究図
Tanaka M, et al. (2008)をもとに作成。
観察研究であり、因果関係を示すものではありません。
画像をクリックすると拡大できます。

③ 慢性的な痛みや精神的な負担

首や肩の痛み、腰痛などが続いていると、 日常生活の中で負担を感じやすくなることがあります。

また、仕事や家庭でのストレス、 心配事が続いている場合にも、 疲労感が強くなることがあります。

慢性的な痛みと睡眠の問題、 精神的な負担は互いに影響し合うため、 一つの要因だけで考えないことが大切です。

④ 病気が隠れていることもある

疲れが長引く場合には、 生活習慣だけでなく、 病気が関わっている可能性も考える必要があります。

例えば、貧血、甲状腺機能の低下、 睡眠時無呼吸症候群、感染症、 うつ病などでも疲労が現れることがあります。

また、少しの活動の後に症状が大きく悪化し、 回復に長い時間がかかる場合には、 通常の疲労とは異なる状態が 関わっている可能性もあります。

IMPORTANT

疲労が長期間続く場合や、 日常生活に支障が出ている場合、 以前と比べて急に疲れやすくなった場合には、 医療機関で原因を確認することも大切です。

特に、胸の痛みや強い息切れ、 意識の異常などを伴う場合は、 速やかに医療機関での評価を受けてください。

SUMMARY

休んでも疲れが取れない背景には、 睡眠、食事、慢性的な痛みやストレス、 病気など、さまざまな要因が関わります。 一つの原因に決めつけず、 身体の状態を多面的に考えることが大切です。

では、こうした疲労に対して、 私たちはどのように向き合えばよいのでしょうか。

最後に、日々の生活と鍼灸・栄養医学の 関わりについてお伝えします。

「今日も良い一日だった」と
思える毎日のために

疲れを感じること自体は、 決して悪いことではありません。

大切なのは、その疲れが どのようなときに生じて、 どのくらい休むと回復するのかを知ることです。

そして、疲れが長引いているときには、 その背景にある要因を 一つずつ見直していくことが大切です。

毎日の食事と睡眠を大切にする

日々の食事や睡眠など、健康を支える生活習慣のイラスト

私たちの身体は、食べたものから 必要なエネルギーや栄養素を得て、 日々の活動を支えています。 また、睡眠は心身の健康を維持するために 欠かせないものです。

忙しい毎日の中では、 食事を後回しにしたり、 睡眠時間を削ったりすることも あるかもしれません。

だからこそ、特別な健康法を増やす前に、 自分に合った食事量を知り、食べること。 自分に合った睡眠時間を確保すること。

そんな基本的な習慣を見直してみることが、 とても大切です。

FOOD, SLEEP & HEALTH

身体を整えるための土台は、 日々の食事と睡眠の中にもあります。

疲れた身体に、鍼灸でできること

「身体が重い」 「疲れているのに眠れない」 「首や肩がいつも張っている」

疲れが続いている方のなかには、 こうした複数の不調を抱えている方も 少なくありません。

鍼灸では、身体の状態に合わせて、 次のような働きが期待されています。

  • 筋肉の緊張や痛みの緩和 首・肩・背中などのこりや、 慢性的な痛みへのアプローチ
  • 睡眠の質の改善 寝つきの悪さや中途覚醒など、 睡眠の問題へのアプローチ
  • 自律神経活動への作用 心拍や血圧などを調節する 自律神経の働きへの影響
  • 痛みの調節機能への作用 神経系が痛みを感じ、 調節する仕組みへの働きかけ
  • 免疫細胞や炎症反応への作用 免疫細胞の活動や、 炎症に関わる物質の産生を 調節する仕組みへの働きかけ

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なぜ、鍼灸でこのような変化が起こるのでしょうか?

その仕組みについては、 今後の健康コラムで一つずつ、 わかりやすくご紹介していく予定です!

健康コラム一覧を見る →

落ち着いた空間で鍼灸施術を受ける女性のイラスト

疲れの背景を、一緒に考える

同じ「疲れやすい」という悩みでも、 その背景は一人ひとり異なります。

睡眠の問題が大きい方もいれば、 食事量が不足している方、 慢性的な痛みや緊張を抱えている方もいます。

当院では、鍼灸と栄養医学の両方の視点を大切にしています。

今の身体の状態や生活習慣を確認しながら、 何から取り組むとよいのかを 一緒に考えていきます。

また、症状によっては 医療機関での検査や診察を おすすめすることもあります。

A LITTLE MORE COMFORT, EVERY DAY

「今日も良い一日だった」

そう思える日が少しずつ増えていくように。
自分の身体と向き合う時間を、
大切にしていただけたらと思います。

SALON DE MOE -AZABU-

疲れやすさや慢性的な不調を、
一度ご相談ください

鍼灸と栄養医学の視点から、
お身体の状態に合わせて
無理のない方法を一緒に考えます。